更年期に入り閉経が近づくと卵巣の機能は衰え、主な女性ホルモンであるエストロゲンが急激に減少して心と身体に変化が起こり、さまざまな症状や障害が現れます。HRT(ホルモン補充療法)は、これらの急速な変化を調整し、症状を抑え、障害を予防・治療する目的で行なわれます。
HRTが最も有効なのは「ホットフラッシュ」と呼ばれる更年期症状であり、4週間前後の治療で約70%の女性に明らかな効果が認められ、膣萎縮症状・性交障害も改善されます。また閉経後に進行する骨量減少を防止し、骨粗鬆症や骨折の予防にも有効です。
HRTを受ける前に、体重・身長・血圧、血液検査で肝機能やコレステロール・中性脂肪などをチェックし、骨量の測定を行い、乳房や子宮に異常が無いかなど、身体の状態を健診します。また生活習慣に問題がないかを見直すことも、HRTの効果を高め、副作用を防ぐためにも重要です。これらを総合して、HRTを行ってはいけない疾病をもっていないかとあわせて専門医と相談して下さい。HRTで使用するエストロゲン製剤には内服薬と貼付剤があり、子宮のある女性では、子宮内膜の増殖を防ぐために黄体ホルモンを併用します。
約7年前に米国女性を対象とした長期のある種のHRTでの乳癌や心臓疾患のリスクが報告されました。HRTで用いるホルモン製剤の種類、量、方法、治療期間は、一人一人で異なりますので、あなたに適したHRTを選んでもらうようにし、治療が始まったら、治療効果と副作用について定期的なチェックを受けることで、より安全で効果的なHRTが可能になります。
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