月経周期の前半には卵胞が成熟し、卵胞から分泌されるエストロゲンが次第に増加して子宮の内腔を被う子宮内膜が増殖して厚くなります。排卵後は黄体からは分泌されるプロゲステロンによって子宮内膜は種々の物質を産生するようになり、妊娠が成立しない周期では黄体の機能は2週間で停止し、これに伴って子宮内膜が剥離して月経が起こります。
このように卵巣ホルモンの作用によって変化する子宮内膜は、本来は子宮内腔のみを被っているのですが、何らかの原因でそれ以外の箇所に侵入し増殖することがあります。入り込んだ子宮内膜も同じように卵巣からのホルモンに反応して、月経時にはその局所でも出血が起こり、これに伴って痛みが現れます。これが子宮内膜症ですが、主な発生部位は子宮周囲の組織や卵巣(チョコレート嚢胞)で、子宮の筋層に発生するのが子宮腺筋症です。排便痛や性交痛の原因にもなり、進行すると月経時以外にも下腹部痛や腰痛を来たすようになり、また不妊の原因になります。
子宮内膜症の診断は、月経痛の性状や経過、診察所見、画像診断法、血液中の腫瘍マーカーの変化などで行いますが、病変の広がりを明らかにして診断を確定するには腹腔鏡検査が必要です。
治療法は、病変の程度や妊娠の希望などによって選択されますが、主に月経を一時的に止める薬物療法や、黄体ホルモン療法が行われます。 子宮内膜症は時間とともに進行し、月経時の痛みも強くなるのが特徴で、進行すると治療も困難になりますので、月経時に痛みの強い方は早めに婦人科を受診して的確な診断と治療を受けることをお勧めします。
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