卵巣は妊娠出産という大きな働きの担い手であると同時に、性成熟期の女性のからだの機能を守る働き重要な臓器である。卵巣の機能が消失しつつある更年期の患者さんのひとりひとりの方の症状やエピソードに耳を傾けていると、実にさまざまな体の変化やそれによって起きていると思われる症状に遭遇する。
更年期は卵巣機能の消失により卵巣から主に出ていたエストロゲンという女性ホルモンの分泌が減少する時期のことをさすが、ここであらためて「卵巣」がその女性にとっていかに重要な臓器であったかを患者とともにあらためて知らされるのである。
人間の女性も例外を除き、卵巣を2個ずつ持っていて子宮の上の端の左右にひも状の組織でぶらさがるようにつなぎとめられている。1個が数gで長さ数cmの平たい楕円形の形をしている。
卵巣の中には、出生時すでに70万~200万個の原始卵胞があるがしだいに退化し思春期には約40万個が残るといわれている。周期ごとにその中の5~12個の卵胞がFSH(follicle stimulating hormone:卵胞刺激ホルモン)とLH (luteinizing hormone:黄体化ホルモン)の作用により発育して、通常その中の1個のみが成熟卵胞になる。
成人女性では、卵巣は排卵を繰り返し、そのたびにエストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンを分泌して妊娠できるからだの状態を維持したり、骨や皮膚や脳細胞や血管など女性のからだの様々な部分を保護するような働きを発揮しているのである。
女性は、12歳前後で初経を迎え、50歳前後で閉経するまで450回以上にも及ぶ月経周期を繰り返す。その間、ほぼ28日ごとに周期をもってせっせと働き続ける。
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