子宮は、その形と機能が女性の生涯において、また月経周期において、大きく変化する特徴を持った臓器です。月経時に剥げ落ちる子宮内膜で覆われる子宮体部は思春期までは小さく、性成熟期に入ると大きくなり、また子宮の壁を構成する筋肉(平滑筋)も厚くなりますが、更年期に入ると再び小さく薄くなります。
月経時に剥離した子宮内膜は子宮の収縮によって押し出され、そして新しい子宮内膜が卵胞からでるエストロゲンという女性ホルモンの作用で増殖し、排卵後に形成される黄体からでるプロゲステロンというホルモンによって種々の物質を分泌するようになります。卵巣・子宮に起こるこのような周期的変化に関連して、月経時に下腹部の鈍痛、排卵の頃のおりものの増量、月経前のむくみや乳房の張り感などを自覚することがありますが、多くの女性では一時的で軽度です。
しかし中には月経に伴って起こる下腹痛、腰痛、腹部膨満感、吐気、頭痛、疲労、脱力感、食欲不振、いらいら、下痢、憂うつなどが日常生活や仕事の大きな支障となる月経困難症で悩む女性も少なくありません。月経の周期が不整で不正な出血が頻回にあり、また出血量が多いために貧血となることもあります。症状が強く、繰り返して起こり、また次第に増強する場合には、何が原因かを診断しなければなりません。
原因となる主な疾患には、子宮筋腫、子宮内膜症や子宮腺筋症などがあり、子宮がんからの出血であるかも知れません。月経困難症は放置すると進行・悪化することがありますので「月経痛だからしかたがない」と思わず、早期診断と原因疾患と病状に応じた治療を受けることが重要です。
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