我が国の子宮がんによる死亡は、検診の普及によって著しく減少していますが、最近新たな変化が見られています。子宮がんと検診についてさらに理解を深めていただくために以下の情報を提供します。
子宮は骨盤の深い部位に膀胱と直腸に挟まれた格好で位置する西洋なしのような形をした臓器で、2つの部分に分かれています。膣に接しているのが子宮膣部と頚部で、さらにその奥に子宮体部があり、各々異なった細胞で構成されていますので、発生するがんの種類も違います。
子宮頚部は直接見ることができ、細胞を取る際に痛みは殆どありません。この部位に病変があると、比較的初期に性交時の出血が起こります。子宮頸がんは女性性器がんの約7割を占め、扁平上皮癌が多く、40歳代後半に多く発生しますが、性行為によるヒトパピローマウイルス(HPV)感染ががんの発症に関連することが明らかになり、若い女性での子宮頸がんリスクが高くなっています。
一方、子宮体部の内面は内膜で被われており、月経はこの内膜が卵巣のホルモンの作用で剥げ落ちることで起こります。この部分の細胞を採るには、子宮頚部を越えて内方に器具を挿入しますので、痛みがあり、器具が入らないこともあります。このような場合には、膣からの超音波断層検査で子宮内膜の状態を見て判断します。
子宮体癌は、子宮内膜癌ともよばれ、ほとんどが腺癌で、全子宮がんの3割を占め50歳代にピークがあり、ホルモンバランスの乱れが引き金になることがあります。
近年、わが国では体がんが増えていますので、異常な出血がある場合はもとより、子宮頚部と一緒に体部の定期検診を受けようにしましょう。
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